裏うぉっちング!!!

理屈っぽいです

漫画家の「キャラが勝手に動く」という表現と、「やがて君になる」7巻あとがきについて

たまに漫画家さんで「キャラクターが勝手に動き出すんです」と表現する人がいる。それは「ここではないどこかの世界で起きた出来事を、作家が受信して描いている」というのが今回言いたいことだ。何を言っているか分からないと思うが、私も分からないのでとりあえずこのまま進めたい。

 

 

最近この手の話をすることが度々あったので、備忘録として。「やがて君になる」7巻が発売されたが、そのあとがき漫画で仲谷鳰先生がこんなことを描いている。

 

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やがて君になる7巻あとがきより

仲谷先生は、どこかにある「やが君」の世界の様子を観察して、そこで起きたことを正しく伝達している観察者なのだ。イデア古代ギリシア哲学者のプラトンが説いた学説だ。イデア界は「物事の本来あるべき理想の世界」で、われわれ人間はイデアの影として世界や対象を認識しているらしい。花には花のイデアが、机には机のイデアがあり、イデア界の影として、花や机を認識しているだけだと。

 

仲谷先生は「スピリチュアルか?」と登場人物の鳩にツッコませているが、実は最近会社の飲み会でも似たような話になった。漫画に限らず、時代や文化にとらわれない普遍的なテーマを扱う作品は、作家の中から湧き出たテーマではなく、現実世界とは違う別世界から受け取った電波を受信して創作しているという説。その場合、作家は単なる伝送路に過ぎないが、伝送路になるには才能や努力が必要で、優れたクリエイターは電波を受信するために絶え間ない努力をしているのだ、みたいな話になった。表現するのが必ずしもその人である必要はないが、誰もが受信できるわけでもない。「キャラが勝手に動くんですよ」みたいな作家の発言も、こう考えると納得できる。作家自身は、あくまで電波を受信してるだけだからだ。画家、アーティスト、フロー体験(ゾーンに入る)をしているトップアスリートなんかも似たようなものかもしれない。

 

さらに遡ると、大学の飲み会でもイデアの話になった。指導教官の専門がヨーロッパ史なので、ソクラテスプラトンアリストテレスと順に講義で学んだのだ。私は大学に入るまで認識中心主義の考え方で、自分に認識できない世界は存在しないと思っていたし、存在していても意味がないと思っていた。だから、宇宙にロマンを感じるとか、壮大なSFの話とかが昔は全く理解できなかったし、幽霊なんかも信じていなかった。遠い未来の話よりは、歴史小説の方がまだ身近に感じる。自分で体験したわけではないが、SFよりは現実味があるからだ。

 

小さい頃から漫画やアニメやゲームに触れて、パラレルワールドやマルチエンディングといった「可能世界」の考え方には慣れていたはずなのに、決定的に想像力がなかった。ちなみにいまも想像力はない。だから本を読んでいるところがある。

 

イデアの話に戻る。指導教官は、講義の説明だけでは腑に落ちなかった私に飲みの席でイデアについてかなり熱っぽく説明してくれた。リアリスト半分、ロマンチスト半分という感じの人だったが、スピリチュアルな話が結構好きで、「いま君の目の前にある机も椅子も酒も、イデアの影かもしれない」と言った。「やが君」のあとがき漫画を読んで、こうした一連の出来事がガーッと蘇ってきた。

 

ここまでしてきたような話は、ロマンチストな人が好きな話だと思う。いまある現実とは違う、全く違う世界がいくつも存在しているというような話。で、大学でイデアの話とかを聞いたりしながら、いまでは宇宙ものやSFにもロマンを感じるようになったわけで、そういう意味では私も少しロマンチストになったのかもしれない。幽霊についてはいまもそこまで信じていないが、社会人になってから飲み屋で知り合った人たちに霊感がものすごい強い人たちがいて、そのときは霊の話でめちゃくちゃ盛り上がった。

 

何とそのときに「悪い気が流れているから絶対に行きたくない場所」として紹介された場所に、私は仕事で行かなければいけなくなった。霊は信じていないものの、私は「何となくその場所には行けない」という理由で、別の同僚に行ってもらった。昔の私だったら考えられない話だが、自分が少しずつ変わっていくような感覚は決して悪いものではない。

 

最近は本を読んだり音楽を聴きながら、別世界へ入り込むことも多くなった。もともとノンフィクションが好きだったが、遠い世界の話を好むようにもなった。少しは想像力がついたのだろうか。例えば、「夏への扉」なんかは10代に読んでもよく味わえなかったと思う。なんだか、最近読むSF小説は中年おじさんの悲哀とか孤独みたいなものが多い気もする。感覚的には萌えに近いかもしれない。ポール・オースターなんかも、めちゃくちゃ孤独で寂しいです。でも優しい。よくよく考えてみると、単に現実逃避能力がアップしただけかもしれないと思うGW最終日である。

 

夏への扉

夏への扉