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裏うぉっちング!!!

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【書評】梅原大吾著「勝ち続ける意志力」 その男、ストイックにつき

日本初のプロ・ゲーマーとして、世界の「ウメハラ」の名はどこかで目にしたことがある人が多いのではないかと思う。私は本書を読むまで知らなかったが、2010年には「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス認定もされている。ウメハラストリートファイターくらいのイメージしか抱いていなかったのだが、彼の自伝的著作である本書は「世界のウメハラ」がどのように形成されてきたのかを端的に記していた。

勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)

勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)

 

ウメハラは典型的な努力家だ。生来からのそのストイックさは、見ていてときに痛々しささえ感じる。一握りのスマートな天才を除けば、世の中の大半は苦しみのた打ち回ってなんとか日々の生活を送っている人が大半だと思う。ゲームの世界で日本一・世界一を達成したウメハラもそれは例外ではなく、自身がどれだけのた打ち回ってきたかが彼自身の言葉で綴られている。成功者の本というのは、概して著者自身の経験則に基づいた啓蒙本になりがちだ。そういう意味で、本書のメッセージを乱暴にまとめると、「勝ち続けるためには努力しろ」の一言に尽きる。それをベースに、彼が体験した「間違った努力」や「正しい努力の仕方」などが説教くさくなく、淡々と述べられている。彼はこれまでゲームばかりしてきたことや、あまり勉強などをしてこなかったことに負い目を感じていた時期もあったようだが、その言葉は力強く、文章も読みやすい。

 

ややライフハック的側面もある本書だが、やはり注目すべきはウメハラの人間性だろう。「安易な道、裏技は使わない」「苦手なことに取り組む」「未踏の地を目指す」「目的は成長し続けること」など、言葉だけ並べると○○マーク出版や○○VE出版の電車内広告みたいな安っぽさがあるが、そのような自己啓発系特有のスッカスカ感はないので安心できる。また、ゲームの話が書いてあるわけではないので、出版社的にはビジネス書のような位置づけなのかもしれない。その証拠に、ときどき「ビジネスだったら、こういう場面でこういう考え方が役に立つ」みたいなことが書かれているが、正直取ってつけた感が否めないので蛇足だろう。

「一番の人間は絶対に逃げてはいけない」などは、一番になった人間ではないとわからない心境があることがうかがえる。とにかく美意識の高い人間なのだということがわかる。1981年生まれ、30前後にしてこの実績、経験、自信、美意識なので、相当紆余曲折してきたのだと思う。

 

個人的には、格闘ゲームと同じ「対人の勝負の世界」である麻雀でも彼がトップクラスに上り詰めたことが興味深かった。やはり、勝負事には元々相性がいいのだろうか。ポーカーの世界に来ても結果を出しそうな気もするが、「趣味でゲームはしない」「そんな暇があれば格闘ゲームか『ガンスリンガーストラトス』をやる」(http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1209/27/news017.html)というくらいなので、実現はしないだろう。プロ・ゲーマーという職業は、今後どのような社会的立場を築いていくのだろうか。日本でもそれなりの収入を得ることが証明できれば、後続が...いるかもしれない。