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裏うぉっちング!!!

オタク、サブカルなどの理屈っぽい話はこちらで。

【イベント】福本伸行トークライブ「逆境上等」に行ってきた

イベント 漫画

早稲田祭で行われていた福本伸行先生のトークライブへ行ってきた。裏でやってた津田大介氏や東浩紀氏のイベントのほうがレポ向きだったかもしれないが、先にこちらのイベントのことを知り、即チケットを購入してしまったので、最後まで見届けようと思った。学園祭というのは、安価で豪華ゲストに会うことができるのがウリであって、これまでもいろいろな学祭イベントに出向いたことはあるが、やはり大きな大学なのでとにかく人が多い。まるで人がゴミのようだった。そして、正直今回のイベントでは、福本先生フォロワーにとって、あまり新しいエピソードはなかったのではないかと思う。作品や自身の考えについては様々な場所で語られてきたし、絵を描くことに関しても、サイバラ先生の「人生画力対決」で散々いじられてきている。だが、直接放たれる氏の言葉は、命より重いのだ…ざわ…ざわ…。

 

この手の学祭イベントは、大抵最前列にいつも座れていたので、今回は余裕をぶっこいてオープン時間ぎりぎりに着いた。イベント開始の約40分前といったところだ。「きたぜ、ぬるりと…」ということで、ぬるぬる来てしまったため、既に100~150人近くが列を作っていた。そして驚くことに(?)、早くから待機している人の過半数近くは女性だった。若い人も多かったし、ちょっと玄人っぽい(何の?)年配の女性もいた(そういう人は大抵一人だ)。教室のキャパシティは500人ほどだったが、開始時間までに全員が入場することはできなかった。なかなか列が進まず、入場後も一人ひとりを順次誘導するので、時間が掛かったようだ。端から順に突っ込んでいくのでは駄目なのだろうか。

 

 

そしてイベントが始まった。MCはIKKAN氏という、主にディズニー作品などの声優をしている(本人紹介)人物だった。2度の離婚歴を持ち、漫画家についてかなり精通しているようだったので調べてみたら、前妻は東村アキコ先生(「海月姫」など)と、新井祥さんという漫画家だった。東村アキコ先生の元夫なら、サイバラ先生や福本先生とも深い交流があるのだろうと推測できる。IKKAN氏はアカギのコスプレをしていたが、言われるまで気付かなかったため、アカギのコスプレの難易度は思ったより高いことがわかった。福本作品の特徴はやはりあの角ばった鼻やアゴなので、生身の人間が服装を真似でもいまいちピンとこないのだ(黒服は別だ)。まず手始めに、会場全体で「ざわ…ざわ…」とざわつくパフォーマンスをやったのだが、意外にもアニメのようなざわざわ感が出ていて、妙に一体感のある空気になった。

 

最初は、福本先生の経歴の紹介から始まった。福本先生は21歳で漫画家デビュー(雑誌連載の開始)し、24歳の時には漫画で生計を立てることができていたとのことだった。もちろん麻雀漫画だが、当時は突出した何かを持っていない場合、「エロかギャンブル」を書いて食い扶持を稼ぐしかなかったということだった(今もそうかもしれない)。エロは書けないとのことだったので、ギャンブルにいったわけだが、IKKAN氏によると、福本先生は裸を描いたことがあるらしい。私の記憶の中では福本作品にエロティックという意味での裸が出てきた覚えはないし、エロティックな女性キャラクターが出てきた覚えもないのだが、もしあるのなら拝見してみたい。やはりいろんな部分が尖っているのだろうか。

 

 

そして、カイジやアカギのようなギャンブル漫画を描き始めたのは、30を過ぎてからと言っていた。それまでは「いい人ばかり書いていた」と言っていたのだが、その「いい人」も、どういう意味で「いい人」なのか気になるところだ。また、観客に「何で福本作品にはまったか?」を聞いたところ、

・映画カイジ・・・約3人

・漫画カイジ・・・大半

・パチンコ・・・1,2人

という結果になり、映画やパチンコではまったのは、ほぼ女性だったのだが、やはりかなり前のほうに陣取っていたので、思い入れは強いのだろう。また、福本作品と言えば、コンビニ本も忘れてはならない。どこのコンビニに行っても必ず見かけるわけだが、やはりコンビニ本はかなり売れているとのことだった。コンビニは、いわゆるブルーカラー層に受ける漫画・雑誌を少なからず扱っているわけだが、福本作品もそのうちの一つに入っているだろうし、今では若い女性たちだって買っていくのだろう。カイジやアカギなどは、本当に幅広い層に支持されていると思う(以前、「鷲巣受け」について熱く語られたページを見てしまった…)。

 

 

次の質問コーナーでは、福本先生のフォロワーは既にご存知の通りだと思うが、作風とは裏腹にかなり堅実なものの考え方をする福本先生の言葉が飛び交った。福本先生は、麻雀、カジノはやるが、パチンコはほとんどやらないとのことで、とどのつまり、大金を賭けるような本気のギャンブルはやらないのだ。著名人の麻雀大会における引きの強さには舌を巻くが、麻雀も「自分で判断して決定できる」余地が大きいから好きなのであって、競馬のように他者がやったものに対してお金を賭けることは、あまり好きではないようだ。

 

ここからは、漫画の話だ。

福本先生は、(作品に登場する)ゲームとストーリーを同時に考えるタイプで、まずは「勝ち方」や「必勝法」を考えて、ケツから順番に物語を組み立てていくとのことだった。トリックを考えてから物語を展開を考えていく、ミステリーの作り方のようなもののようだ。そして「僕の作品は時が止まる」という自虐(?)ネタも飛び交い、果てしなく続く鷲巣麻雀に思いを馳せるなど。。あと、「過去の話は面白くないので、未来を書きたい」という考えがあるようで、作品の中に突然現れる空白の時間などは、今後も触れることはないようだ。

また、「何でキャラクターの鼻が尖っているのか?」というお決まりの質問もきたが、「(鼻が尖りはじめたのは)『天』くらいから」で、「ギャンブルのヒリヒリする感じが色濃くなっていくと尖る」という裏設定(?)も聞くことができた。確かに、アカギも最初のほうは普通の柔らかめの鼻なのだが、どんどん鋭角が鋭くなっていき、凶器のようになっていく。狂気の沙汰ならぬ、凶器の沙汰になっていくわけですね。

ほかにも、「(耳を切るのは)カイジとゴッホだけ」、「主人公には、親、友人など、過去のことはほぼ出てこない。アカギの親とか出てきたら嫌でしょ?(笑)」など、福本節も飛び出していた。確かに親が出てきたら、ギャンブルの最中に「やめなさい」と言われて家に帰らされてしまいそうな。。

 

 

そして、一番盛り上がったのは、やはり生で絵を描く企画だ。「人生画力対決」のように、しっかり描く過程もスクリーンに映し出される。違うのは、「出た!出たよ、この書き方!回したー!!」というサイバラ先生の野次がないくらいだ。会場の笑いは変わらない。ティッシュ箱(残念ながら背の低いティッシュ箱だった)からくじを引いてお題を決めるのだが、いきなり「朝早く来て花瓶の水を変えるアカギ」というイレギュラーなお題が来た。もちろんデコと鼻筋から描き始めるのだが、今日は紙を回すことはなかった。次の「ガチャピン」はよくわからない生命体になり、最後の「麻雀をするサザエさん」は、なぜか汗を書いて中を切るサザエさんらしき人物が描かれた。先生曰く、「危険牌を切るサザエさん」ということだった。「ピシッ」という効果音とともに中を切る中年主婦の絵は、かなり面白かった。

 

 

後半は、悩み相談や会場からの質疑応答だった。金言だらけの作品を描く先生の言葉は、やはりどこか重々しさがある。「人生自体がギャンブルなのだ」というのはその通りだと思う。学生でいるのも、就職するのも、飛行機に乗るのも、日々生活する上で判断することは、全て完全に予測することはできない。「漫画家であることもギャンブルなので、あえて本気のギャンブルをしようとは思わないし、そっちに気を使う暇もない」とのことだが、全くの正論だ。そして、ギャンブルに強い人というのは、「熱くならずに、すぐに引き返せる人」とのことで、弱い人は、「最初は直感で張ってたのに、段々(勝ちたいという)欲に張っていく」というのだ。確かに、パチンコでも「あと少しで、取り返せる」と思ってずぶずぶはまっていくと抜けだせなくなるし、麻雀でも欲を出せば直感が鈍る(無欲になるのも難しいことだとは思うが)。

 

 

そして、最後は人生訓のような言葉があった。「Q:どの会社に入れば勝ち組ですか?」という質問に対して、「(どこで何をしてても)ずっと努力できる人が勝つ」という、非常に堅実かつ最もなお答え。30,40と年を重ねていくと、努力することは難しく、段々努力しなくなっていくのだという。「学生が何となく学校に行くように、大半の社会人は何となく会社に行っている」というのは、妙に納得してしまった。例えばある程度の安定が確保されていたりすると、どこか、学校の延長上になってしまっているところがあるのかもしれない。そんな福本先生の若い時の座右の銘は、「負けてもともと」。以前インタビューで「負けてもともとと、継続は力なり」と答えていたと思うのだが、今回もまさに当たって砕けろの精神でチャレンジし続けることと、地道に努力を続けることの大切さをひたすら語られていた。赤木しげるが言った「無念を愛す」なら最高だというのも以前言っていたが、その境地に行けるのは、恐らく赤木だけのような。。

 

派手な逆転劇やシビアな心理描写が描かれる福本作品だが、先生自身は堅実な努力家だ。売れている漫画家は全員そうであろうし、ほかの職業だって、成功している人は誰もが努力しているはずだ。「逆境上等」というタイトルのイベントだったが、物凄く現実的で堅実な、地に足のついた講義だったと思う。

人生を逆転する名言集

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