裏うぉっちング!!!

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「劇場版「魔法少女まどか☆マギカ[前編]/始まりの物語」を見たけど、絶望した。

「大したストーリーの変化はないけど、作画がだいぶ変わった」という前評判を聞いて、遅ばせながら劇場へ足を運んできた。平日の昼間にもかかわらず、ほぼ満席だった。8割は男性で、10代~20代がほとんどだった。30代以上の人たちは一人で来ている人が多かったように思う。

 

物語の大筋は確かに大きな変化はなく、アニメ前半部分のダイジェストとも言える。映画が終わったシアター内では、「作画がだいぶ変わってたよね」「マミさん全然違ったね」「変身シーンも違ったよね」と、とにかく作画についてとやかく言う人たちの言葉が充満していた。正直、私は作画の違いを満喫する暇などなかった。前半部分の絶望が濃縮されたものを見せられたので、すごく疲れたからだ。新OPが始まる前で、既に込み上げるものがあって目頭が熱くなってくるほどだったのだ。なので、杏子の食べてるものが違うとか、マミさん家で出されたケーキが違うかもとか、そんなこと微塵も思わなかった。本当だ。

 

  • 「絶望」へのこだわり

 

改めて思ったことが、虚淵玄の「絶望」への執拗なこだわりだ。Fate/zeroでもそうだったが、虚淵玄は絶望の前に必ず希望を挟む。「助かるかも!」と思わせてから、殺す。「やっと自分の気持ちが通じた!」と見せかけて、実は何も伝わっておらず、やはり殺される。など、とにかくただ絶望を見せるのではなく、「上げて落とす」ことで絶望を最大化する。本編に限っては、マミさんとさやかだ。ほむらは、絶望を死ぬほど味わっているので、期待すらしない。

 

マミさんに関しては、劇場版でマミられる前のフラグがより際立って演出されていたように思う。マミさんが、「もう、何も怖くない(ドヤ顔)」と言った時、「志村、うしろー!うしろー!」と言いたくなった。もはや、「希望」の兆しは、圧倒的絶望を味わう前のお約束なのだ。

 

さやかもそうだ。上条の怪我を治したことで、彼女は希望(上条がバイオリニストとして復帰する)を手にしたし、さらなる希望(彼との明るい未来が待っている)をも展望していたはずだ。だが、自分自身はゾンビ的身体になったという絶望と、上条を友人に奪われたという二重の絶望がきっちり待っているわけだ。「願い」と引き換えに魔法少女の十字架を背負わされるわけだが、本作ではわずかな「希望」の芽も全て摘まれる。「友情・努力・勝利」だのと掲げる作品を見ると、「世の中そんなに甘くねーよ!」と思うが、まどマギに関しては、「世の中そんなに悪いもんじゃないよ」と思ってしまう。というか、そう思わないとやっていられない。全ての希望が摘まれる社会で、誰が生きたいと思うだろうか。

 

  • 「家族」の存在

まどかマギカでは、まどかの家族が描かれる。逆に言うと、まどか以外の家族は出てこない。劇場版冒頭は、母親とまどかのやり取りから始まり、新OPでは家族内での彼女の成長過程の描写が見られた。まどかは母親がキャリアウーマンで父親が専業主夫という以外は、ごくごく日本において典型的な家族だ。4人家族の長女として、親の愛情を受けて、素直で嘘をつかず、心優しい良い子に育った。何ともない日常を送っているが、特別な何者かになりたいと強く願っているわけでもないし、平和な毎日がずっと続けばいいと思っていたはずだ。だが、彼女の周りからその日常や平和は徐々に崩れ落ちていく。

 

彼女たちは「少女」だ。魔法少女はまだ子供であって、魔女のような大人ではない。少女は大人や男の子の手を借りて、困難に立ち向かっていくはずだが、本作では男の子は出てこない。また、まどか以外のキャラには相談できる家族も仲間も存在しない。かなり閉じた世界でのできごとだ。唯一頼るべき母を持つまどかは、さやかのことについて母に相談する(さやかの名前は出さない)。具体性のない抽象的な話だが、母は大人として娘にアドバイスをし、娘の背中を押してやる(だがその結果として、さやかのソウルジェムを投げ捨てるという「間違い」を犯してしまった)。

 

マミさんには遠い親戚しかいないことをほむらが明かしていたし、マミさん自身、相談できる相手が誰もいない不安をまどかにぶつけていた。また、さやかはマンションから出てくる描写が度々ある。マンションの外観を見る限り、そこそこの育ちであることがわかるし、家計は恵まれているはずだ。だが、さやかが夜中に魔女狩りのパトロールに出ることができることを考えると、親はさやかにあまり干渉していないのかもしれない。彼女の部屋のレイアウトも、ベッドがど真ん中にくる不思議な配置だ。もしかしたら、まどかほど真っ直ぐな愛情を親に注がれていなかったため、雨の中、「何でも持っているのに何もしない」とまどかを罵ったのかもしれない。

 

 

アニメ版は既に終わっているわけだが、これだけ献身的なほむらが報われないと、「こんなの、絶対おかしいよ」と思わざるをえない。劇場版の後編は、まだどうなるかわからない。出てくる食べ物がほとんど変更されているところを見ると、もしかすると、アニメで見たものとは違う時間軸の話だったという可能性もある。甘い言葉には必ず裏があるし、世の中は厳しく理不尽だ。だが、なぜ「少女」にこれほどの試練を与えるのだろうか。あかほりさとるの作品を見て育ってきた私には、ダメージがでかすぎる。いいぞ、もっとやれ。

 

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